IE9ピン留め
マラーノ、真実のノマド
新鮮な食材にふれて目の保養、試食をすれば舌の保養にもなって、しかもリーズナブルなレジャー。それはズバリ市場。


お財布と相談のうえ新鮮な食材を厳選して買い込めば、その日の食卓まで豊かになるというおまけ付き。

そういった市場が近所にあって、なおかつ使い勝手が良ければ言うことなしですね。
そんなワケで先日ある意味ご近所な「塩釜仲卸市場」へ初めて行ってまいりました。

仙台市から45号線を北上。
仲卸市場は塩釜魚市場と道路を挟んで向かい合う、岸壁の近くにあります。
想像よりはこぢんまりとしていたものの、活気と賑わいに溢れていました。

さて、塩竈と言えばマグロ。
中でも高品質のマグロを土地の人は「ひがしもの」と呼びます。

「ひがしもの」とは、三陸東沖のマグロ漁場で秋から冬にかけマグロ延縄(はえなわ)船によって水揚げされるメバチマグロのうちで、鮮度や色つや、それに脂のりと旨味に優れていると塩竈の仲買人の目にかなったマグロのこと。正確には「三陸塩竈ひがしもの」と呼ぶそうです。

塩竈の人たちが自信を持って塩竈ブランドとして提供するマグロ…と理解して良さそうですね。

したがって市場内のマグロの割合…かなり高いです。
もちろんそのほか多彩な魚介類には事欠きませんが、場内いたるところに散らばる新鮮なマグロの深紅の輝きの眩しいこと。

マグロの中落ちや中トロを店頭で試食しつつ今夜のおかずを物色しながらブラブラしていると、なんと店先でマグロの解体に出くわしました。
もちろんこれは解体ショーではありません。お店の通常業務です。


体長1メートルを超えるマグロのまるまるとした存在感。

普段なかなかお目にかかれません。

金属のような光沢に包まれ、身を開けばまさに真っ赤なルビーのごとき美しさ。

それをざくざくと捌いていくお店の人の手際の良さに、つい惚れ惚れと見入ってしまいます。

大トロの部分が取り出されると店先に集まったお客さんの間からは歓声と溜め息が。



市場の新鮮食材は一刻も早く胃袋に納めるのが礼儀…ということなのかどうか分かりませんが、場内には市場で購入した魚介類をそのまま海鮮丼にして食べられる食堂があります。


システムは至って単純。
ご飯セット(¥300)と呼ばれるご飯とみそ汁とお新香のセットを注文。

そこへ今しがた買った中落ちと活き帆立を乗せて賞味。



ここであらためて旨いと述べるのは野暮ですが、本当に美味しいです。
一度も冷凍されていない魚介類は味の深みと広がりが違うような気がします。

味の彩度が高いような、体中が海の風景に満たされるような…まさに口福。



さて、お腹もいっぱいになったところで塩竈のさらにその先の松島へと足を伸ばしてみました。

紅葉の盛りが近い季節でもあったので、松島の紅葉の名所とされる扇谷へ。
扇谷はちょうど松島町と利府町の境に位置し、ここ数年で有名になりつつある松島の紅葉スポットとか。

松島には「松島四大観」と称される、いわば松島の風景をのびのびと美しく見渡すことができる場所が4つあります。

扇谷はその四大観のひとつ。
この場所からの眺めは「幽観」と呼ばれています。

ここ松島は仙台平野を南北に分断する松島丘陵の東端。
つまり山の尾根がそのまま海に沈み込んでいる地形でしょうか。
海に面して背後はすぐに山。扇谷へ向かう道路も狭い砂利道で上り坂。

すれ違う車に神経を使いながら何とか辿り着きました。
ちょっとした山奥にも関わらず、紅葉狩りの人たちがたくさんいます。
















高台から海を眺めると海岸線がちょうど扇形に開いているように見えて、遠くの島々がまるで扇に描かれた絵のようでとりわけ風雅です。日の出や日の入り、満月の夜など、この風景はまさに幽玄そのものでしょうね。

ただ紅葉の盛りには少し早かったようで木の葉まだ染まりきれておらず、カラフルな斑紅葉(まだらもみじ)を楽しむことに。

さらに奥へと進むと浮き世と隔絶の感のある静寂。

この静寂を愛した瑞巌寺第99代住職、雲居希鷹(うんごきよう)が座禅堂を構えたこともあったとか。明治期まではこの場所に寺院もあったようです。

なるほど座禅瞑想には非常に適した場所かもしれません。


この日はマグロの赤から紅葉の赤へと塩竈から松島、海辺の秋を楽しんだ休日になりました。
# by h_bellmer | 2009-12-10 23:24 | 嘔吐する異邦人
貴族的評価様式とゾルゲ
ちょっと久しぶりに東北地方を飛び出してみました。

…とは言っても、福島県のすぐ隣の栃木県は那須ですが。
しかし栃木は初体験。仙台から250kmほどとは言え、ちょっと関東圏に入っただけでもずいぶん遠くまで来てしまった気分になります。


初めての那須の街並は箱根と軽井沢を足して2で割った印象でしょうか。
御用邸があるだけに、まるで箱根の粋と軽井沢の風情が溶け合ったような落ち着いた雰囲気のある街です。

那須と言えば那須湯本温泉がありますが、今回の旅のハイライトは温泉ではありません。

那須の代表的な観光地である「殺生石」。
古い物語に飾られたこの場所が那須旅行一番の思い出です。

那須湯本温泉郷をぐいぐいと駆け上がり、山の岩肌がむき出しになって硫黄の匂いが立ちこめる場所に殺生石はあります。

真っ赤な頭巾を被って居並ぶ小さなお地蔵様の一群、草木が満足に生えることのない非現実的で禍々しい空気。


温泉郷と呼ばれる土地にはしばしばこうした死の風景が広がっています。

東北なら秋田県湯沢市の川原毛地獄谷や岩手県の松尾八幡平。
温泉地と死後の世界は親和性が高いイメージがあります。



平安時代後期、美女に化けて宮中に潜り込み鳥羽上皇をたぶらかした玉藻前(たまものまえ)という名の女性がいました。

しかしその正体は中国から渡ってきた妖怪九尾の狐。宮中から逃げ出した九尾の狐は、ここ那須の地で数万の軍勢によって退治されるも、毒気を放つ石となって長いあいだ土地の住民の命を脅かしていたそうです。

毒気(=毒ガス)とは間違いなく硫化水素や亜硫酸ガス。これによって近くに寄ってくる生き物を殺してしまうことから「殺生石」の名前がついたとか。

1385年に那須を訪れた玄翁という和尚がこの毒の石を打ち砕き、殺生石のかけらが全国3ヶ所に飛び散ったそうです。

以来、殺生石はその毒気を弱め現在の姿になったと言われています。
確かに、現地に行ってみるとそれほど硫黄の匂いは強くありません。
















ところで上の逸話にも明らかなように、玉藻前あらため九尾の狐は妖怪の中でもかなり凶悪で強力な妖怪です。

ご多分に漏れず水木しげる御大の影響を受けて、妖怪好きな少年であった僕にとって九尾の狐は憧れの的でした。

遠くインドに始まり中国、さらに日本に渡って美女に化け、国家元首をたぶらかして悪事をはたらく九尾の狐はきっと峰不二子並みのワールドワイドな大悪党。

その大妖怪にゆかりの土地で、僕が人知れず静かに興奮していたことは絶対に内緒です。

今でこそしめ縄に縛られてこぢんまりと佇む殺生石ですが、じっと見つめていたら石のなかで眠る九尾の狐の一瞥に魅了されそうな心持ちになりました。

# by h_bellmer | 2009-11-13 11:27 | 嘔吐する異邦人
女として わが身うつれり 初鏡
だいぶ前の話になりますが、仙台・宮城ディスティネーションキャンペーンというイベントがありました。

JR東日本や自治体が中心となって展開する大型観光キャンペーンですが、これによって新たにクローズアップされた宮城県の名物が数多く誕生。

そんな新名物のひとつに「気仙沼ホルモン」があります。

気仙沼市は仙台から車で3時間程、南三陸の中心都市。
海の幸の旨いことは言わずもがなですが…ホルモンとは、意外です。

しかしご当地出身の知人曰く「旨いですよ」と太鼓判。
そして有り難いことに、この気仙沼ホルモンをいただく機会に恵まれました。

気仙沼ホルモンは普通のホルモンと何が違うのでしょうか?

気仙沼ホルモンはモツと呼ばれる豚の内蔵(トンタン、ハツ、ガツ、レバー、小腸、大腸)をミックスしたものにオリジナルのにんにく味噌で味付けしたもの。
しかもボイルせずに生から焼くのでホルモンの風味がよりダイレクト。

正しい食べ方としては、たくさんのキャベツの千切りを付け合わせにウスターソースと一味唐辛子で味付けしていただくようです。

今回、手に入った気仙沼ホルモンの販売元は「からくわ精肉店」。
商品に同梱されていた注意書きによれば、一番美味しいのは炭火焼。
家庭のフライパンであれば煙が出るほどアツアツに熱して、油を引いたうえで水分がなくなるまで炒めるのが美味しい食べ方とか。

炭火焼は無理なので、フライパンでしっかり炒めてみました。

フライパンから飛び散る油と格闘しながら、塩味の白モツ、みそ味の赤モツにこれでもかとばかりに火を通して、千切りキャベツと合わせて実食。
















ビジュアル的にはちょっとアレですが。

さて、気仙沼ホルモンのお味は…。


濃いです。

…というか、かなりしょっぱい。
気仙沼ホルモンは地元の住民、わけても漁師の方たちに愛された料理でした。

濃いめの味付けは疲労回復に。
たくさんのキャベツは船上生活での野菜不足を補うために。

気仙沼ホルモンには過酷な漁師の肉体を支えるための栄養を補う意味があったのかもしれません。

しかし豪快な料理です。
こせこせと手を入れず、新鮮な素材に最低限の加工だけを施す太平洋のごとくおおらかな料理。浜育ちの僕には何だか共感できる一品です。

キャベツにはウスターソース。ホルモンには一味唐辛子が欠かせないということでしたが、僕はそのまま何もつけないキャベツと合わせてちょうどいい味付けでした。

気仙沼ホルモン誕生秘話に少しだけ触れてみましょう。

戦後まもなく三重県から気仙沼に移ってきた助六さんという人がいたそうです。
ある日、地元の漁師さんと立ち寄った肉屋のまかないとしてホルモンをはじめて食べ、その旨さに感激。

ホルモンの洗い方と味付けを学び、それを商売にしたところ大当たり。
気仙沼市内に一時は30件あまりのホルモン屋がひしめく大ヒット商品になったそうです。

ホルモンというと、女性などには敬遠されがちなマニアックでクセの強い部位ですね。しかし匂う場所ほど栄養価が高いもの。

他の動物の肉体を食んで生きる人間の業に従えば、ホルモンのような「命の濃い場所」には、ことさら滋養が詰まっているような気がしないでもありません。

その晩は美味しい喜びに出逢えたことに感謝しながら盃を傾けました。

夏ならもちろんキンキンに冷やしたビールで。
冬なら、ちょっと寒いかもしれませんが冷酒でしょうか。

南三陸の豪胆な味。
気仙沼ホルモンをぜひ一度召し上がってみてください。

# by h_bellmer | 2009-11-13 01:10 | 滋味礼賛
乳くさき 酒の相手や 猫火鉢
岩沼市は仙台の南、古くは奥州街道と江戸から海周りで仙台に至る陸前浜街道の分岐点に位置し、交通の要衝として栄えた街。

その岩沼でラーメンの美味しい有名店の筆頭と言えば「麺組(めんぐみ)」。

はじめて訪れたのはとある休日のお昼。
お店の駐車場はほぼ満車。入店して15分待ち。

麺組は食券制です。この日は「こってり醤油ラーメン(680円)」を選びました。

お座敷のテーブルで待つこと数分。
目の前に現れたラーメンは魚・鶏・豚のダシをミックスしたと言われる琥珀色のスープ。スープの表面にはまるで湯の花のような背脂が。


食欲のボルテージが一気に上がります。

「こってり…」と銘打ってはいるものの、麺組のそれは胸焼けするほど脂っこいわけではないのでご安心を。


ひとたびスープを口に含むと三種のダシが口の中で独特のハーモニーを奏でます。
魚・鶏・豚がそれぞれ存在感を示しつつ、調和している妙は確かに人気店の証でしょう。

具材が古典的なほどにシンプルなところもまた良いですね。

麺は中細ストレート麺。
朝からラーメンを待ち続けた胃袋にはちょっと物足りなかったかもしれません。

大盛りにすれば良かったとちょっと後悔。


魚ダシを交えて味のバランスを保つのは麺組のオリジナリティでしょうか。
好き嫌いが激しく分かれる魚ダシですが、麺組では魚ダシのクセをある意味ギリギリまで希釈し、広く一般化しているように感じました。


もし魚ダシに抵抗を感じる人で麺組のスープでさえ難しいようなら、たぶんきっとどこのお店の魚ダシも食べられないかもしれません。

味のバランスにおいて秀逸。麺組の特筆すべき点はそこにあると思います。


ものの本によれば、魚ダシは東北を中心に東日本に多く用いられるダシだとか。
魚ダシは、節系と呼ばれる鰹節や鯖節を使うものと、煮干を使うそれに分けられるそうです。麺組の魚ダシはどうもその両方を使っているような印象ですが…実際はどうでしょう。

岩沼市を含めた仙台都市圏における南の雄と呼ばれる「麺組」。
噂に違わぬ美味しさをしっかり堪能した昼下がりでした。

# by h_bellmer | 2009-11-11 00:41 | 麺座
エスニシティ、幻想
先日、泉中央のペデストリアンデッキを主会場として「泉マルシェ」なるイベントが行われました。

「マルシェ(marche)」、なにやら新しい響きです。



フランス語で「市場」という意味ですが、市場と言わずに敢えてマルシェと呼んだあたり、何やら泉区に漂う空気にうまくマッチしているような、そんな語感ではないでしょうか。

そして内容はフランス物産展と思いきや、これは仙台を中心とした有志の店舗によるあくまで地元密着の市場。

それでもお店の傾向はどこかヨーロッパの香りを感じるお店がズラリ。

西洋アンティークをはじめチーズやワイン、藤や麻の手作り雑貨。それに可愛くオシャレな焼き菓子に古書。

















もちろんマルシェを謳うだけあって新鮮な野菜と魚介も並んでいます。

天候にも恵まれ…というか恵まれ過ぎて9月の下旬にしてはかなり暑かったのですが、いずれこの日の泉中央はかなりの賑わいを見せていました。

メインステージではジャズの演奏、会場各所ではフランクフルトの振る舞いやら大道芸やら。

場所の空気に乗せられて、あやうく高価なアンティークに手が伸びそうな気持ちをグッとこらえます。

新鮮で珍しい食材に出会えるのがマルシェの醍醐味。
目に鮮やかでみずみずしい野菜や果物は見ているだけで元気になれそうです。

などと言いつつ実際は石巻のおいしい昆布を購入しました…。
海産物のレア感、野菜の一枚上を行ったようで侮れません。


新鮮食材をたっぷり見せられて極限に近くなった空腹を満たすため、レストランの集まるブースにてパエリア(500円)と欧風煮込み(300円)を注文。


パエリアにオリーブが入っていなかったのが少し残念だったものの、それはそれで程よい味付け。トマトベースの欧風煮込みにはパンもついてとりあえずは満足。



泉マルシェは前夜祭に始まり当日はカゴ&コサージュの手作り教室など各種イベントを行って最後のキャンドルナイトまで、訪れる人たちを飽きさせないスケジュールが組まれていました。

この日は午前中だけしかマルシェにはいられなかったのですが、きっと一日を通して楽しめるイベントであっただろうと思います。

今回が初めての開催だった泉マルシェ。
きっと次回もあるものと楽しみにしています。

ちょっとおしゃれで可愛いコンセプト、マルシェ。
泉という場所で大切に育ってくれると良いですね。


本当は毎月2回くらい開催してくれると嬉しいですけど…なんて。

# by h_bellmer | 2009-09-29 01:05 | 嘔吐する異邦人
< 前のページ 次のページ >